A. 広汎性発達障害(PDD)には…
以下の3つが含まれます。
 自閉症
 アスペルガー症候群
 特定不能の広汎性発達障害

診断基準は
 @ 対人関係の障害
 A コミュニケーションの障害
 B こだわり、あるいは想像力の障害  の3つです。

 自閉症…@〜Bを全て満たす場合
 アスペルガー症候群…@とBを満たすが、Aの傾向はあまり甚だしくない
 特定不能の広汎性発達障害…@〜Bの満たし方が不十分であるが、その傾向が強い場合

PDDは人口の1パーセントと言われていますが、傾向は誰にでもあり、特別な配慮が必要と考えられた場合、不適応行動がある場合に診断されます。


B. 注意欠陥多動性障害(ADHD)
注意力の維持が困難で、多動になったり、気が散りやすかったり、ぼーっとしたりする症状を持ちます。

C. 発達性協調運動障害(DCE)
運動機能の不器用さが甚だしい状態です。

D. 学習障害(LD)
能力の割に特定分野の学習が身に付きにくい状態です。

AのPDDのうちの知的な遅れがないグループとBCD、を併せて、特に「軽度発達障害」と言います(軽度の知的障害を含める場合もあります)。


基本的な考え方
PDDの診断基準(対人関係の障害、コミュニケーションの障害、こだわり)のうち、
「対人関係の障害」が中核的なもので、そのために知的障害が引き起こされている。
親への愛着が発達しなければ、親からの言葉かけは他の生活音と同じレベルで無視される。テレビなどのメディアの刺激の方が強い。
PDD児の対人関係の発達
 1.無視の段階
   ↓
 2.道具的段階
   ↓
 3.快適関係の段階
   ↓
 4.愛着関係の段階
   ↓
 5.自立
<出来るだけ早く愛着段階まで引っ張り上げることが大切>

PDD児の対人関係の発達を促す
・文字・言葉課題・構成課題を使用し、褒められたら嬉しいということを教える。
・多少困難な課題も努力しなければならないのが人のルールであることを教える。
・褒められたら嬉しいことを学べたら、褒められたくて、こんな課題も頑張ろうとする。そしてそれも褒められる。

PDD児のコミュニケーション力を伸ばす
・素朴に言葉を教える。
・視覚優位だから、文字を教える。
・文字を覚えたら順々に語彙(ごい)、文章を増やしていく。
・構成課題では、部分から全体を構成する方略を覚える。
・視覚機能の苦手さを早期から克服する。
・家庭での取り組み
・療育場面と同じ課題を同じやり方で実行。
・きちんと褒めること。
・「教える−教えられる」親子関係を確立すること。
・親子でたくさん遊ぶこと。

幼児期に知的障害を克服し、自立した立派な大人に育てるべく頑張りましょう。


行動修正を必要とする行動
・授業中に立ち歩く。
・授業中に、教室から出て行ってしまう。
・落ち着きがない。
・対人関係でのトラブル(暴力)が絶えない。
・被害的な受け取り。
・教師の指示を聞かない。
・親の指示を聞かない。
・兄弟喧嘩が多い。
・朝の支度が遅い。忘れ物が多い。

HFPDD児達の行動理解を図る
相談は、可能な限り、学校・家庭同席で行います。
HFPDD児の行動は、その障害を知らない人には理解が難しく、「頭ごなしに叱りつける」あるいは、「したい放題させてしまう」という両極端な対応になり、いずれにせよ、問題行動をより悪くしていきます。
「水泳の予定だった体育の時間が直前の雨によって体育館に変更したらパニックを起こして1時間泣き叫んでいた」「誰も悪口を言っているわけではないのに、みんなが僕の悪口ばかり言うと先生に言いつけに来る」など、常識的には理解しにくい行動があります。が、それらは、障害の本質から来る誤解されやすい行動であり、そのことを理解していただくことが大切。理解していただいた上で、正しい行動をとっていけるように、段階的に目標行動を設定して身につけさせていきます。

行動修正
・どんなときに、どんな行動をとり、それに対して周りがどう対応して、結果どうなったのか、というABC分析に基づいて、目標行動を設定する。
・行動チャートを用いて評価する。
・ソーシャルストーリーを用いて、目標行動について理解させる。
・具体的な行動療法を用いる。
   →これらの方法を必要に応じて用います。

社会の規範や常識が緩やかになり、HFPDD児らが混乱しやすく、育ちにくくなっています。腰の軽い、メリハリのある勤勉な育ちが大切です。規範を大切に、自立した大人に育てていきましょう。


早起き早寝(覚醒睡眠リズムの基本)
朝6時に起きて、太陽の光を見ることで、脳が「朝が来た」と認識する。
  ↓
セロトニンがたくさん分泌され、体が覚醒モードに入る。
(集中しやすくなる、イライラしにくくなる、不安を感じにくくなる、姿勢が良くなる)
  ↓
すっきりした覚醒状態で学習したり、運動したりする。基本的な運動(歩く、呼吸する、噛む)が、セロトニンの分泌を十分なものにする。
(昼寝は3時までに切り上げる。夕寝を絶対させない)
  ↓
夜の8時から10時になると、セロトニンがメラトニン(脳が自ら出す睡眠薬)という物質に変わることで、スムーズで質の良い睡眠に入る。就学前児から小学校低学年は8時、高学年でも9時には寝かせる。人の脳は睡眠中に記憶された事柄を整理する仕組みがあり、質の良い睡眠をとると、学習したことの定着が良くなる。

 ヒトという種は、もともと、太陽が昇ったら目覚めて活動し、太陽が沈んだら眠るという生活をしながら、発達してきました。ここ数十年の、文明の発達が、ヒト本来の生命のリズムを乱しており、子どもの発達に悪影響を及ぼしています。
 特に、PDDの子は生まれつきセロトニンの分泌量が少ないことが分かっています。だから、特に悪影響を受けやすいのです。PDDの子どもには必ず早起き早寝と運動をさせなければいけません。
 早寝からはじめると失敗するので、早起きからはじめるのが成功のコツです。早起き早寝で健康な賢い子に育てましょう。

ゲーム脳
テレビゲーム、携帯ゲームなどのゲームをしている時の脳波をはかると、認知症老人の脳波と同じように脳があまり働いていない状態を示す波形が見られます。人の脳が活発に働いているときに見られるβ波がなくなってしまうのです。はじめのうちは、ゲームをやめると元に戻りますが、毎日、数時間もゲームをしていると、ゲームをやめても戻らなくなってしまい、きれやすい、集中力のない「ゲーム脳」と言われる状態になってしまいます。
また、PDDの子は、ゲームにはまりやすいし、ゲームの世界と現実の世界の区別がなくなりやすいという特性も持っています。
禁止が、もっとも適切な処置です。ゲームだけでなく、テレビの視聴、パソコンも同じ悪作用があるので、同様の注意が必要です。
ゲーム脳からの回復のためには、早起き早寝、運動、学習に積極的に取り組みましょう。

低血糖症
ヒトはそもそも、そんなにも消化のよくないものを食べて、ゆっくりと呼吸してエネルギーに変えて生活してきました。が、近年ヒトが口にする甘い飲み物や白米は消化が良すぎて血中にあっという間に取り込まれて、血糖値の急上昇を招きます。これは、体にとっての危機状態なので、インシュリンが大量に分泌され、血糖値を下げます。が、こんどは、血糖値が下がりすぎてしまうため、再び体は危機状態になり、アドレナリンを分泌します。これにより、再び血糖値は上がりすぎるというように、食後の血糖値は乱降下を繰り返すことになります。低血糖になったときに分泌されるアドレナリンが怒りのホルモンと呼ばれ、いらいらときれやすくなります。これを低血糖症と言います。おかずをきちんと食べる食事のバランスや、甘いもののとりすぎを避けることはとても大切です。

学習
軽度発達障害を持つ子どもは、学習についてもいろいろな不利な癖があるために、知能が普通でも、学習が苦手になることがよく見られます。
家庭での親子での学習の習慣を付けましょう。

親子関係
わかりにくさを持った発達障害児の子育ては、叱る→困ることをする→叱るという悪循環に陥りがちです。誉め上手になるためには誉める技術を磨かなければなりません。

運動の不器用さ
軽度発達障害を持った子どもたちの多くは、運動も苦手です。運動することで脳が発達する、記憶が良くなる、運動技術が身に付くことで遊びやすくなる、セルフエスティームがあがるなど、良いことがたくさんあります。また、体育会系の部活動で鍛えられた子は社会でも働きやすくなります。家庭で日常的に取り組みましょう。


手先の不器用さのある子には様々な遊びを
手先の不器用さがあると、生活していく上でとても不便です。学校生活でも学習をはじめとした様々な活動でつまずきのもとになります。小さいころから毎日、遊びのなかで鍛えることにつとめましょう。親が楽しくリードして遊ばせないと子ども自らは絶対せず、不器用さは改善しません。
(遊びの例)
・トランプ遊び(シャッフルや、配り番など積極的にさせる)
・あやとり
・アイロンビーズ
・ゆび遊び
・折り紙(紙飛行機折り、紙鉄砲)
・めんこ、こま回し
・ドミノ倒し
・はさみやのりを使う紙工作


目の不器用さのある子には訓練が必要
追従性眼球運動、衝動性眼球運動、両眼視という3つの機能を全て鍛えることが必要です。毎日5分の訓練を3ヶ月続けると改善します。
また、眼球の動かないテレビやゲームはやめて、野外での遊びを盛んにし、室内遊びでも、かるた取りや卓球など眼球の動く遊びをしましょう。