*こどもの感染症のページ

―学校伝染病を中心にー

こどもの感染症の中には学校や保育園、幼稚園でよく流行し、伝染を阻止するために登校、登園基準が定められた感染症があります。

1、《はしか(麻疹)
2、《おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)と反復性耳下腺炎
3、《みずぼうそう(水痘)



1、《はしか(麻疹)

〜はしかは子供たちにとって重大な病気です。はじめての誕生日にはしかワクチンを。〜
 はしかは子どもにとって重症感の強い感染症です。日本はワクチンの接種率が80%前後で麻疹対策としては後進国といわれ、各地で毎年のように流行が繰り返されています。はしかにかかった子供の中には肺炎や脳炎を合併して後遺症が残ったり、死亡することもあるのが現状です。
伝染力は強く、もし麻疹ワクチンを接種しないまま麻疹の人と接触する場合はかなり感染し発症します。潜伏期は約10日から12日です。この潜伏期が過ぎ、約12日目くらいから、前駆期症状が起こります。
前駆期は発熱とカタル症状と言われる結膜炎、鼻炎、咳などを認め(それを第1病日とすると)第3、4病日目くらいに口腔内にコプリック斑という粘膜の湿疹を認めます。ここまでを前駆期といいます。
この発熱が一旦下降し、また上昇するころに発疹がでます。ここからが発疹期です。第4、5病日から発熱が再び始まります。発熱は前駆期に一度上がり、一旦下がり、またここで上がるので2峰性発熱と言われています。まず前額から耳介後部顔面、体幹、四肢へと広がり、約3日から5日継続します。発疹は褐色の色素沈着とともに終わり、解熱に向かいます。(発疹期終了)
発熱は第1病日から数えると発症してから解熱まで約9、10日目くらいかかり、子供の病気としては重症感が強くなります。感染は前駆期(カタル期ともいわれる)から解熱して24時間までは強いと言われています。
はしかはワクチンの接種率を95%以上に維持できれば、流行を阻止することができます。接種したときの抗体獲得率は98%といわれています。麻疹ワクチンを接種すれば皆さんの可愛いお子さんがはしかにかかることを防ぐだけでなく、まだ接種していない1歳前の赤ちゃんが流行の中で命を落とすのを防ぐことができるのです。
平成17年7月、私たち呉西地区の小児科医は大阪大学名誉教授上田先生をお呼びして予防接種最新の話題と題して勉強会を行いました。やはりここでも麻疹ゼロをめざして、
われわれ小児科医の有志は、お子さんの健康を願うすべてのお父さん、お母さんへ1歳になったらできるだけ早く麻疹ワクチンを接種することをおすすめすることの大切さを喚起させられました。



2、《おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)と反復性耳下腺炎

(おたふくかぜ)
ムンプスウイルスの飛沫感染でおこり、潜伏期は2〜3週間です。感染しても発症しない不顕性感染が約3割あるといわれていますが、この場合でも抗体ができ、二度とかからなくなります
症状は耳の直下やや後方の痛みより始まり、顎のラインにそって腫れてきます。両側が腫れることが多いのですが、腫れてくるのに左右の時間差があったり、片方だけの腫れで終わったりすることもあります。片方だけの腫れで終わっても、抗体はできるので、二度とかかることはありません。食物摂取時唾液が出る時によく痛みます。腫れる少し前から、熱が出ることが多く、出ないこともあります。耳下腺の腫れは3日目くらいに最大になり1週間くらいでひいてきます。あごの下にある顎下腺が腫れることもあります。
まわりで流行っていて、しかも両方の耳の下が腫れたような典型的な場合は、診断に困ることはないのですが、首のリンパ節炎や以下に述べる反復性耳下腺炎と区別が難しい場合はムンプスウイルスの抗体を調べることがあります。
耳下腺の腫れは、自然経過で治るのですが、おたふくかぜが恐いのは、髄膜炎、睾丸炎、膵炎のような合併症をおこすことがあるからです。
耳下腺の腫脹がひいたら登校、登園は可能です。
(反復性耳下腺炎)
 くり返し起るおたふくかぜ様の耳下腺炎です。5〜10歳に多く、典型的なものは発熱することがなく、耳下腺の腫脹は片側性です。他の人にうつることはありませんので、登校禁止にはなりませんが、初回はほとんどおたふくかぜと見分けがつかないため、学校は休んで様子を見ます。ほとんどの場合2−3日で症状がおさまります。2回以上おきた時は血液検査をして、おたふくかぜの抗体があることがわかれば、次から学校を休む必要がなくなります。



3、《みずぼうそう(水痘)

みずぼうそうは水痘−帯状ウィルスの初感染によって起こされる発熱と全身に水疱(内部に水を持った発疹)ができる感染症です。潜伏期間は約2週間で、体中に赤い小粒発疹から水疱が出現して始まります。通常7日間くらいで痂皮化(かさぶた)して治ります。
 水痘はこどもにとって決して楽な病気ということはありません。年長のお子さんでは高熱が出ることもありますし、アトピー性皮膚炎など皮膚の弱いお子さんでは重症化することもあります。また水疱を掻きむしって二次感染をおこすととびひ(伝染性化膿疹)などを合併し瘢痕が強く残ります。
健康小児への水痘ワクチンの接種はそのメリットが大きいと言うことで世界的に広がりつつあります。米国では小児全員に接種しています。水痘ワクチンの効果はおよそ90%と言われ、他の予防接種に比べると予防効果はやや低めといえます。
 水痘に罹患したお子さんと接触してから72時間以内(3日以内)に水痘ワクチンの接種を受ければ80%の予防効果が認められています。水痘患者は発疹がでる2日前から周囲の人に感染する能力があります。家族内で兄弟に発疹をみつけ罹患に気づいたときは他児は接触してすでに2日が経過していることになり、時間的に余裕がありません。 ただし、1歳以下のお子さんでは予防接種は推奨されておりません。
 すべての発疹がかさぶたになったら登園、登校可能です。